今日は、私の身の回りで起きたことを書きます。先日、私の身近なところにいる人物(個人情報を明かすわけにはいかないので、以下A氏とします。)が某毎月分配型の海外REITファンドを買ったのです。A氏の年齢は60代後半。ファンドの購入は某銀行の窓口(A氏はインターネットなど使えません)。その際、銀行の担当者の方からリスク説明があり、「損をする可能性もありますよ」ということを何度も言われたそうなのですが、本人に後で聞いてみたところ、案の定というべきか、肝心のリスクの中身については全く理解していない様子でした。コストについてもよく理解していない模様。
どうやら、「多少の損する可能性はあるらしいが、利回りのいい預貯金」という感覚で購入した模様。リスクなど考慮せず、分配金に心を惹かれたようです。
A氏は投資経験など全くありません。アセットアロケーション(資産配分)だとか、分散投資の意味とその重要性だとか、リスクとリターンの関係とか、そういう投資における理屈は何一つとして知りません。それ以前に、販売手数料とか信託報酬などのコストについても全く無知です。商品内容を見ると、販売手数料は3.15%、信託報酬は年1.4175%です(いずれも税込み)。ちなみに信託財産留保額は1万口につき基準価額の0.3%。けっこう・・・というか、かなりの高コストです。海外REITに投資するファンドですから、当然のことながら為替リスクもあります(目論見書によると為替ヘッジはなし)。
もしかしたら、A氏のようなパターンは極端なケースなのかもしれません。しかし最初に書いたように「みんなが買っているから」「有名だから」とかいうよくわからない理由で投資判断(これは投資判断と呼べるようなものではありませんが・・・)をしているケースは決して少なくないものと思われます。
リスク説明というものが非常に重要であることはいうまでもありません。しかし、「そもそも、なぜリスク説明というものがあるのか」ということすら理解していない人がいるのではないのか?という気がします。これが私の杞憂であればよいのですが・・・。
実際のところ、私のまわりにいる高齢者の方々で「分配金がいいから」という理由でファンドを買っている方は何名かおられます。問題なのは、不利な点やリスクなどを全く知らずに買っていることなのです。不利な点・リスクなどをちゃんと理解していて買う分には特に問題ないと思うのですが・・・。
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・・・さて、前置きはこれくらいにしておきます。本来であれば、今日の記事はここまでの内容で終わるはずでした。しかし、それだけで終わらせるわけにはいきません。ここからが本日のメインテーマだからです。
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さて、先日ファンド購入後の第1回目の分配金が入ったとのことで、分配金支払い通知書を見せてもらうことになりました。A氏は、投資経験が全くないので、分配金支払い通知の読み方がわかりません。よって、投資経験のある私がそれを見て利回りの計算などをすることになったのです。
・・・分配金支払い通知書を見た時、私は様々な想いを巡らせました。その思考の過程の中で、私はある種の衝撃を受けたのです。そして、なぜ資産形成に不利とされる毎月分配型ファンドがこれほど人気があるのかということを、まさにその瞬間に理解したのです。それは論理的なものではありません。あくまでも感情的なものです。
私が、ファンド購入時のデータとその後の基準価額の変動・そして分配金のデータを元にしてトータルでの利回りを計算してみると、わずか半月程度ですでに利益が出ていました。基準価額が上昇していたのが大きかったようです。もちろん、すでに投資経験のある私にとっては、そのファンドの利回り自体は別にめずらしいものではありません。私は、自分自身のポートフォリオでそれをはるかに超える利回りを上げているわけですから・・・。では、私はいったい何に対して衝撃を受けたのか?それを以下に書きます。
私が思ったこと。それは、「A氏はすでに60歳代後半になっている。では、私が仮に今現在60歳代、70歳代だったとして、このファンドを買っていたとしたら?そして過去に投資経験が全くなかったとすると、この分配金通知書を見てどう感じるのだろうか?そしてまた、私がパソコンを使えなかったとしたら?インターネットを使った経験がないとしたらどうだろう?」ということを思わず連想してしまったのです。以下、その内容です。
まず第一に、すでに高年齢になっている人にとっては「長期の資産形成」など、もはやさほどの意味も持たないのではないでしょうか。少なくとも私が高齢者の立場であるならばそう考えるはずです(お金を次世代に相続したい場合は別ですが・・・)。 お金が必要なのは30年先ではありません。仮に今60歳なら30年後には90歳。もし今70歳なら30年後には100歳です。20代・30代にとっての30年後とは全く意味が違います。お金が必要なのはまさに「今」なのです。
そして第二に、投資経験が全くないということは、リスクとリターンの関係やリスク管理の重要性など全くわかりません。知らないのであれば最初からそんなことに思いを馳せることもありません。
第三に、パソコンが使えず、したがってインターネットも使えないということは情報収集面で著しく不利になります。よって、ネット上で話題になっている、ファンドのぼったくりとも言える高い手数料の問題も知らなければ、毎月分配型ファンドは税制上不利だとか言うこと自体を全く知らないわけです。ここでまたA氏のことを書きますが、A氏の場合、「銀行や郵便局は信頼できる」と考えています。「まさか大手の銀行や郵便局が、おかしな商品を売ることはないだろう」というわけです。また、ネットを使えないA氏にとって、ファンドを買えるのは、実質的に街の銀行や郵便局だけです。証券会社に対しては心理的に抵抗があり、ネット証券のことも知りません。よって販売手数料無料のノーロードファンドの存在や、非常に割安な信託報酬のファンドの存在も全く知らないのです。いや、それ以前の問題として、高い手数料がファンドのパフォーマンスに大きな悪影響を与えていることさえも意識の中にはありません。
第四に・・・ここが一番のポイントなのですが、預貯金しか知らない人にとって、その分配金の利回りの高さに大きな驚きを感じるはずです。何しろ長らく超低金利が続いていて、まともな金額の利息など受け取ったことがないからです。当人にとって一番大切なのは、今ここにある分配金の金額そのものなのです。それ以上でもなければそれ以下でもありません。いや、むしろそれ以外のことはどうでもいいといっても過言ではないでしょう。 そして、その分配金はすでに生活口座に振り込まれているわけです。そのお金は、すぐ手の届くところにあり、明日の買い物にでも使うことができます。老後の生活に不安のある高齢者にとって非常に魅力的に思えることでしょう。
・・・こう考えてくると、毎月分配型ファンドはまさに恐るべきマーケティングによって生み出された商品なのだという気がします。これはまさしく高齢者をターゲットに開発された商品そのものなのでしょう。マーケティング的には大成功の商品だといえますね。
もちろん、私は投資に関して様々な勉強をしてきた人間です。毎月分配型ファンドの問題点は十分に承知しています。しかし論理的には理解していても、感情的な面はまた違います。私自身、利回りを計算していて、不覚にも「この商品は、実はけっこういい金融商品ではないのか?」と一瞬考えてしまいました。もちろん、次の瞬間には毎月分配型ファンドの不利な点・そして高い手数料のことを思い出し、その考えを打ち消しましたが・・・。
今日の記事に結論はありません。 ただ、「投資知識がない・高齢である・パソコンスキルがない」などの投資家の属性によっては、たとえ少々問題のある商品であっても非常に魅力的に思えることもある、ということなのです。高齢の投資家さんのことを思うとき、どうしてもそれを考えてしまうのです・・・。今、私の胸中は非常に複雑です。
私が書きたかったのは、「論理的な正しさ」と「感情面での正しさ」との間には、実はけっこう大きなズレがあるのではないか、ということなのですが・・・。そしてこれは同時に情報格差の問題でもあります。そしてそのギャップを埋めることはきわめて困難を極めるだろう、と思うわけです。
テーマ:お金の勉強 - ジャンル:株式・投資・マネー
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