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Author:masa
1972年生まれの某中小企業勤務の独身男性サラリーマン。貧乏人からお金持ちを目指して奮闘中。貯金は手堅く、投資はリスクを小さく、というのがモットー。
なお、当ブログの更新は原則として不定期です(月に数回程度の更新になると思います)。

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非正規雇用問題と格差問題について考える
過去に書いた記事の関連記事です。過去の記事はこちら。

ワーキングプアは決して他人事ではない

ワーキングプアは決して他人事ではない(2)

ワーキングプアは決して他人事ではない(3)

ワーキングプアは決して他人事ではない(4)

ワーキングプアは決して他人事ではない(5)

ワーキングプアは決して他人事ではない(6)

これまでは、「ワーキングプアは決して他人事ではない」というタイトルで記事を書いてきました。その意図するところは、ワーキングプアや、非正規雇用労働者問題と無関係でいられる人など誰一人としていないということでしたが、記事の内容からして、そろそろこのタイトルがふさわしくなくなってきています。そこで今回からは、関連記事と言うことでタイトルを変更することとしました。ひとまず今回は、過去の記事の補足とまとめを中心に書いてみたいと思います。補足記事につき、過去に書いてきたことと重複する部分が多々ありますので、その点ご了承願います。

私は、ワーキングプアは決して他人事ではない(6)において、「ワーキングプアや非正規雇用問題は、本当に小泉改革だけが諸悪の根源ではない」と書きました。実際のところ、これはかなり控えめな表現でした。私の本音としては、小泉改革がワーキングプアや非正規雇用労働問題、ひいては格差問題を引き起こしたわけではなく、むしろほとんど無関係ではないのか?というのがより正確な私の本音です。


格差拡大と小泉改革は関係がないという話はネット上でいくつも見つかります。以下にそのうちのいくつかを示しておきます。

格差を生んだほどの大改革か?(2006/5/12)(NET EYE プロの視点)

-------------引用開始-------------------------------
 労働面の格差拡大は、民間企業の生き残りをかけた自発的行動が最大の原因だ。90年代末から、苦境に陥った企業が正社員をかく首してその分を非正規労働者で補ったり、労働者の賃金を引き下げた結果である。

 日本企業の多くはバブルの余波で人員を余していたが、90年代末までは日本に根付いた「終身雇用」の強力な建前によって、倒産の危機に瀕しない限り首切りは困難だった。だが、中国の台頭に直面した日本の製造業は「工場の海外移転」などの名目を掲げかろうじて、社会からかく首を“認知”された。高度成長期以降初めてのことだ。

 この、日本の産業界で終身雇用制度など労働者保護的な慣行が廃止、あるいは弱まった時期が、たまたま小泉政権の誕生した時と一致したのに過ぎない。もちろんタクシー業界の「規制緩和による台数増加→売り上げの低下→賃金切り上げ」という「小泉要因による賃金カット」の具体例はある。しかし、主な労働面での格差拡大は、産業構造の変化や労使慣行の変更によるものだ。
-------------引用終了-------------------------------

上記サイトは古いものではありますが、これはおおむね本質を突いていると思います。

ちなみに、私自身の認識では、例として挙げられているタクシー業界の話にしても、本当に小泉改革の要因によるものなのかどうかは単純に決めつけられないと考えていますが、これも詳しく見ていくとそれなりにややこしい話になりそうなので、その話はここでは触れないこととします。

小泉改革が格差を拡大したわけではないという論調のサイトの2つめです。

[JMM]村上龍、金融経済の専門家たちに聞く Q.1021 回答:土居丈朗

-------------引用開始-------------------------------

 小泉改革は、基本的方向性として正しいのですが、小泉首相以下、細部へのこだわ
りが若干弱かったせいか、経済学的に見て必ずしも全てが正しいとはいえない部分が
あったと考えます。格差が拡大した根源的原因は、小泉改革のせいではありません。

 非正規雇用化は、日本の年金制度や雇用保険制度等、正規雇用中心の社会を前提と
して制度設計に以前からなっていたことによるものが根源的な原因であり、小泉改革
が主因ではありません。小泉内閣後半に(遅ればせながら)多くの国民が認識するよ
うになっただけのことです(専門家は既に以前から認識し警鐘も発していましたが、
注目度合いが小さかった)。地域間格差は、確かに、国と地方の税財政改革「三位一
体改革」における税源移譲で拡大した部分があるものの、潜在的には1990年代に
おける経済構造の変化として、地域間の経済(GDP)格差は拡大傾向が始まってい
て、それが税収格差にも反映したことが根源的な原因です。そもそも、税源移譲は地
方自治体側の要求が主となって実施されたものであり、私自身、税源移譲で格差が拡
大することを、三位一体改革が貫徹する前から指摘していましたが、地方六団体は要
求し続けたのです(ある種、自業自得のところがあるわけです)。地方交付税が減額
されたことが格差を拡大させたとの認識は、データに基づかない事実誤認であること
は、拙稿「バブル・デフレ期の地方財政:財政赤字と地域間格差」、 内閣府経済社
会総合研究所編『バブル/デフレ期の日本経済と経済政策 財政政策と社会保障』慶
應義塾大学出版会(近刊)に示しています。税収だけの(都道府県間)ジニ係数は近
年上昇していますが、(臨時財政対策債を含めず)地方交付税を含めた一般財源のジ
ニ係数はずっと一定しています。まさに、小泉改革が格差を拡大させたのではないの
です。

-------------引用終了-------------------------------




それから格差という問題についてOECDの資料を見てみます。

OECD東京センター

上記サイトの中の「日本に関する資料を見る」というリンク先にあるのが下記サイトで、ここから引用します(なお、下記サイトはPDFファイルです)。このデータは2008年10月21日に発表されたもののようです。

OECD (2008), Growing Unequal? : Income Distribution and Poverty in OECD Countries COUNTRY NOTE JAPAN (IN JAPANESE AND ENGLISH): JAPAN

-------------引用開始-------------------------------

日本の所得格差と貧困は、長期にわたる拡大傾向に反して、過去5年間で縮小に転じた。しかし、日本の貧困水準(所得分布の中央値の2分の1未満で生活する人の比率)は、OECD諸国の中で4番目に高い。

一世帯あたりの所得は過去10年で減少した。低所得層にとっては1990年代後半が最も困難な時期であったが、高所得層は2000年代前半に所得の減少を経験した。日本の下位10%の国民の平均所得は6000米ドル(購買力平価)であり、OECD平均の7000米ドルを下回る。上位10%の国民の平均所得は60000米ドルでOECD平均の54000米ドルよりはるかに高い。

給与と貯蓄から得られる所得の格差は、1980年代半ばから30%拡大したが、同時期においてOECD諸国の平均は12%増だった。日本よりも大きく拡大したのは、イタリアだけであった。

日本社会は急速な高齢化が進行している。過去20年で、高齢者の割合は2倍に増え、子供の数は3分の1減った。これらの変化が格差拡大の原因のひとつである。

1985年以降、子供の貧困率は11%から14%に増加したが、66歳以上の人の貧困率は23%から21%に減少した。これは、依然、OECD平均(13%)を上回っている。

-------------引用終了-------------------------------


これだけでは情報量が少なくていささかわかりにくいのですが、これによると、「日本の所得格差と貧困は、長期にわたる拡大傾向に反して、過去5年間で縮小に転じた」とありますから、どうやら過去5年間で格差はむしろ縮小しているようです。これが正しいのであるならば、小泉改革で格差が拡大したというのはウソということになりそうです。もっとも、「日本の貧困水準は、OECD諸国の中で4番目に高い」ともあるので、なかなか厳しい状況であるのは変わりはないようですが・・・。また、格差拡大の原因として、OECDは急速な高齢化を指摘していますね。


私は、非正規雇用問題・ワーキングプア問題や格差問題に関して膨大な量の文献を読んできましたが、小泉改革がこの問題を拡大させたとするような証拠は見つけることができませんでした。私がワーキングプアという問題を最初に認識したのは私が失業していた2000年の話でしたが(もっともその当時はまだワーキングプアという言葉もなかったはずですが)、その当時はまだ小泉内閣の時代ではありませんでしたし、非正規雇用労働者が増加したのは、1990年代だったというのは過去の記事で書いたとおりです。


それから、私は第2回目の記事、ワーキングプアは決して他人事ではない(2)において、「正社員というのは、ある種の”特権階級”のようなものなのだろうか?」と書きましたが、その想いはますます強くなりつつあります。


私の目には、特権階級と化した正社員の既得権益を守るために非正規雇用を言わば”人間の盾”として扱い、一方的にリスクを押しつけているようにしか見えないからです。


本当に雇用流動化が必要だというのなら、非正規雇用労働者のみにリスクを押しつけるのではなく、これも以前に書いたように、正社員の既得権益の縮小もしくは撤廃が必要ではないかと考えています。これには当然、雇用コスト引き下げのために、正社員の給料引き下げを容易にすることや解雇規制の緩和などといったことも必要と思われます。また、それに合わせて、年金制度・雇用保険・各種セーフティーネットなどの再構築も必要でしょう。なぜならば、こうした制度は正社員であることを前提としており、非正規雇用を保護する仕組みになっていないからです。
そして最終的には正規・非正規というような分け方ではなく、その両者の中間的なところで機会平等と同一労働同一賃金を目指すべきでしょう。

この同一労働・同一賃金に関してWikipediaより引用します。

同一労働同一賃金(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

-------------引用開始-------------------------------

同一労働同一賃金(どういつろうどうどういつちんぎん)または同一価値労働同一賃金(どういつかちろうどうどういつちんぎん)とは、同一職種であれば同一の賃金水準を適用させる賃金政策のこと。あるいは、企業間、産業間(業種間)、男女間、雇用形態間(正規雇用か非正規雇用か)の賃金格差の解消を目指すこと。

国際労働機関(ILO)では、同一労働同一賃金を最も重要な原則の一つとしてILO憲章の前文に挙げており、基本的人権の一つと考えている。


(中略)


ヨーロッパ
欧州連合は1997年にパートタイム労働指令を定め、雇用形態を理由とした賃金格差を禁じている。

アメリカ
アメリカでは、人種差別、女性差別、年齢差別などに対する雇用平等法制が発達している。1980年代以降、ペイ・エクイティ運動が盛んになり、職務賃金が確立された。基本的に、同じ仕事をしながら賃金に大きな差がでるということはあり得ない[3]。ただし、雇用形態を超えた均等処遇について法制化はされていない。これは、「市場における公正な競争」や「契約の自由」を重んじるアメリカ社会の特徴に起因している


日本
日本では、労働基準法において「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」(第3条)、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」(第4条)としている。また、ILO第100号条約も1967年に批准している。ただし、労働基準法第3条は差別的取扱禁止の対象とする理由を限定列挙したものであるから、たとえば学歴、能力、勤続年数、雇用形態などを理由とした個々人の賃金額の差異は適法であると解される。
欧米が「仕事」基準の「職務給」であるのに対し、日本は「人」に値段がつく「職能給」「年齢給」を採用している。企業は、正規労働者の終身雇用の慣行に対して、残業、賞与、配置転換および出向などによって労働力の調整を図っている。
これらのことが正規労働者と非正規労働者(特に女性)の均等処遇を妨げている

-------------引用終了-------------------------------

これを読む限りでは、日本の場合、同一労働同一賃金という点ではずいぶん他国に遅れをとっているという印象があります。



次に終身雇用についてですが、私としては、一つの会社で雇用を守るタイプの安定雇用というような、もはや維持不可能なシステムから脱却し、以前から書いてきたように、辞めやすいが再就職もしやすい制度への移行が不可欠だと考えています。もっと言えば、例えば正社員という制度そのものを撤廃してしまい、従業員全員が契約社員になるなど、より完璧な雇用流動性を持たせる方が現実的ではないかと思うくらいです。
つまり、解雇を過剰に規制して一つの職場での仕事を守るのではなく、辞めても再就職しやすいという仕組みを作り、社会全体で人を守るという制度へ移行すべきではないかと思うわけです。その際、必ずしも正社員である必然性はないのではないかと思います。


余談ですが、米国にはPEO(Professional Employer Organization)というものがあるそうです。

PEO とは - ITレポート(キーワード3分間講座):ITpro

-------------引用開始-------------------------------

PEOとはProfessional Employer Organization


「共同雇用」という形で事業会社の雇用を肩代わりする組織。PEO会社を利用することで、労務管理費や雇用にまつわるリスクなどを軽減できる。

 米国では、約20年前の税法改正で、「PEO」と呼ばれる企業に対して、顧客企業に代わり、従業員の給与や税金を支払う権利が認められています。従業員は顧客企業の指揮下で働きますが、雇用契約はPEOと結ぶことになります。「共同雇用」と呼ばれるこの形態は、日本では認められていません。

 規模のメリットを追求できる大企業は、自社内に間接部門を抱えることもできますが、中小企業はそうはいきません。米国では、わずらわしい税金や年金の計算や、納付業務を外部委託したい中小企業を顧客として、PEOが広がっています。官公庁にも、中小企業からの税金の徴収手続きが簡略化できるなどのメリットがあります。

 米国の業界団体「NAPEO」によると、全米50州でおよそ700社のPEO会社が存在するそうです。ハーバードビジネスレビュー誌はPEOを「90年代に最も急成長を遂げたサービス産業」と評しています。

◆効果
戦略部門に資源を集中
 ある会社がPEO会社にサービスを依頼したとすると、社長以外のほとんどの社員がPEO会社に籍を移します。そしてPEO会社からの派遣社員として、もともと在籍した職場で働くことになります。

 人事や経理などの間接業務はPEO会社に任せられるので、採用や労使交渉などに頭を悩まされることも少なくなります。間接部門に人員を割かずに、戦略部門に集中できるようになるのです。

 正社員でなくなることでモチベーションの低下が懸念されるかもしれませんが、もともと米国では人材派遣やアウトソーシングが早くから普及しています。PEOはこうした風土を前提として広がったサービスともいえるでしょう。

◆事例
日本版PEOも
 日本では、アウトソーシング大手のフルキャストが昨年4月から「日本版PEO」ともいえるサービスを展開しています。導入第一弾となったのは、ソニーミュージックグループです。アルバイト社員およそ300人はホワイトカラーの人材派遣を行うフルキャストオフィスサポート(東京・渋谷)に転籍しましたが、派遣社員として引き続き同グループで働いています。

 ソニーミュージックグループとしては、アルバイト社員に支払う給与は以前と同じままなので人件費の削減にはつながりませんが、採用や給与計算など労務管理業務を軽減できます。

 総務省の労働力調査によると、正社員比率は94年から10年連続で下がっています。派遣社員やアルバイトの活用が広がるなか、労使双方にメリットのある雇用形態を探る努力は今後も求められるでしょう。

-------------引用終了-------------------------------


このシステムでは、社長以外のほとんどの社員がPEO会社に移籍し、PEO会社からの派遣社員としてもとの職場で働くことになるとのことです。もしも、こうした仕組みが日本で本格的に導入されることになれば、労働環境は大きく変わり、正社員はますます減ることでしょう。今でいうところの正社員というものは、もはや主流ではなくなるかもしれません。


終身雇用にしても、本当に終身雇用と呼べるような人は現実にはさほど多くはないのではないかと考えられます。総合研究開発機構(NIRA)のサイト内にあるPDFファイルより一部引用します。

終身雇用という幻想を捨てよ―産業構造変化に合った雇用システムに転換を― | (NIRA 総合研究開発機構)

-------------引用開始-------------------------------
現実の雇用データをみると、日本の労働市場は、終身雇用制度という言葉とはかな
りかけ離れた実態であることが浮かび上がってくる。
たとえば、図表1は平成18 年における従業員の勤続年数を調べたものである。もし
も、終身雇用なのであれば、大学卒業後に就職したとしても、50~54 歳でおよそ30
年、54~59 歳でおよそ35 年の勤続年数になるはずである。しかし表をみると、これ
らに近い数字なのは、大企業の製造業に勤める男性従業員(50~54 歳で30.2 年、54
~59 歳で33.7 年)のみである。たとえ製造業に従事する男性従業員でも、小企業に
なると勤続年数は17 年に過ぎない(50~54 歳)。中企業のサービス業に勤める女性従
業員にいたっては、勤続年数は10 年以下(50~54 歳)である。つまり、そもそも終
身雇用と呼べるような長い勤続年数を経験しているのは、せいぜい大企業の製造業に
勤めている男性従業員だけである。
それでは、大企業の製造業に従事している男性従業員は、日本全体でどの程度の割
合を占めてしているのだろうか。図表2-1は図表1と同じ調査による産業別の従業
員数を表したものである。この表をみると、大企業の製造業に従事している男性従業
員は、全体のわずか8.8%にすぎない。また、別の調査でみると、図表2-2にあるよ
うに大企業の製造業に従事している男性従業員の割合は全体の4%である。このよう
に調査方法によって、多少の違いはあるものの、終身雇用と呼ぶような長期雇用とな
っていた従業員は、人口全体のごく一部を占めているに過ぎない。
-------------引用終了-------------------------------

このデータを見ると、終身雇用と呼べるほどの長期雇用というのは人口の一部だけのようです。
私自身の中小企業勤めによる個人的経験の話になってしまいますが、私が勤めている(あるいは過去に勤めてきた)会社の例でも、新卒者というのはむしろ少数派です。新規採用の多くが中途採用で、全くの素人を入社させて一から教育したケースもありました。考えてみれば、そもそも私自身も中途入社です。


さて、今回もとりとめのない、何が言いたいのかさっぱりわからない記事になってしまいました(-_-;)


今回の記事で言いたかったことは、

*小泉改革によって非正規雇用問題・ワーキングプア問題が発生したわけではない。
*小泉改革で格差が拡大したというのはウソである。
*過去5年間で格差はむしろ縮小している。
*正社員の既得権益が大きな問題であり、これこそが問題の本質である。非正規雇用に一方的にリスクを押しつけるのではなく正社員の既得権益を壊し、正社員を含めた本当の意味での雇用の流動性を高め、最終的には同一労働同一賃金となるようなシステムを構築すべきである。
*終身雇用と呼ぶような長期雇用従業員というのは、現実には人口全体の一部に過ぎない。ならば、なおさら終身雇用にこだわる必要はない。


・・・といったことです。

それにしてもこの問題、解決に至るには非常に難しいとつくづく思います。
問題の本質の一つと考えられる正社員の過剰保護をやめ、制度として解雇も容易だが再就職もしやすいシステムを作ったとしてもそれで本当に社会全体として適切に雇用が流動化するのか?あるいは、それが現実に機能するのか?やってみないとわからないという部分は常に付きまといます。
何より、正社員の既得権益を壊す必要がある以上、正社員・労働組合などの激しい抵抗に遭うことになるでしょうが、これも大きな難関です。最終的に機会平等や同一労働・同一賃金を目指すにしても、そこに至るまでの道のりは容易ではなさそうだというのが今の実感です。

解雇規制緩和の話に関しては、こんな話もあります。
竹信三恵子著「ルポ 雇用劣化不況」(岩波新書)より引用します。


竹信三恵子著「ルポ 雇用劣化不況」p.204より引用
-------------引用開始-------------------------------

「解雇の自由な国」の実情

 2009年3月上旬、コペンハーゲンにあるデンマーク労働総同盟のビルの一室で、労働市場専門コンサルタントのクリスチャン・セリストさんは苦笑気味に切り出した。
 「金融危機で大量失業があちこちで起きるにつれ、EU(欧州連合)の内からも外からも、デンマークに視察が相次いでいる。解雇が自由な国という評判に、自由にクビが切れたら、どんなに楽だろうと願ってやってくる人たちは多い。でも、解雇の規制を緩める代わりに、私たちが失業期間中の生活の安定や再就職の支援などに、どれだけのコストと手間を掛けているか、わかっているのだろうか。それを知らずに解雇規制の緩和に飛びつくとしたら、極めて危ない」

-------------引用終了-------------------------------

本文はこのあともまだまだ続くのですが、この本を読んだ限りでは、仮に正社員の解雇規制を緩和してもそんなに簡単に問題が片付くことはなさそうです。再就職支援という仕組みをどう作るべきか、これも大きな課題になりそうです。



それから、この非正規雇用問題や格差問題に関して、資本主義や市場原理そのものを否定する人がいることにも疑問を感じています。この問題というのは、市場原理によるものではなく、むしろ市場原理が十分に機能していないから起きているのではないかと考えているからです(正社員はさほどのリスクを負わず、非正規雇用労働者側だけに過大なリスクを背負わせているとしか思えない今の状況から、そう考えているわけですが・・・)。
もちろん、資本主義や市場原理といえども完璧なシステムではないので、その時々の状況に応じて政府の介入は必要だとは思います。しかしそれでも基本的にはよくできた仕組みですから、資本主義や市場経済を否定するのはナンセンスだと考えています。


さらにもう一点書いておきたいのが年功序列についてです。日本企業の特徴の一つである年功序列制度も、もはや維持することはできないと思います。年功序列というシステムは、年齢によって人を差別することによって成り立つシステムだからです。差別を前提としたシステムは今の時代にはもはやそぐわないでしょう。それに年功序列には他の欠点もあります。以下、Wikipediaより引用します(「『独自研究』に基づいた記述が含まれているおそれがあります」とありますから、必ずしも適切な記述とは限りませんが)。もちろん年功序列にはメリットもあるのですが、ここではあえて欠点の部分のみを引用しておきます。

年功序列(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

-------------引用開始-------------------------------

欠点


事なかれ主義
大過がなければ昇進していくので、リスクのある行動に積極的でない。また、思い切った施策が出ない。


転職者や非正規雇用に不利
同一企業への勤続が重視される事や、賃金が高く付く為に、特に高年齢の転職者が制度的に不利になる。また、派遣社員などの非正規雇用者は年功序列制度の対象外とされ、賃金を相対的に低く抑えられてしまう。


人材の流出
若年層は職務内容に比して薄給を強いられるため、年齢に係らず能力相応の賃金を得られる企業や国に人材が流出してしまう。若く,能力が高いほど、実際の職務と評価との乖離が大きくなるため、年功序列制度を避ける結果となる。


人員配置が硬直的になる
抜擢人事が行いにくい。また、高賃金の年長者は配置転換したり賃金を下げたりしにくい為、切り捨てられる。


既卒(就職先がないまま卒業した学生)の就職が不利
年齢が上がるほど企業内の年齢による賃金モデルから外れてしまうため、企業は既卒や博士をあまり採用したがらない。従って、団塊ジュニアのような人数の多い世代が不況の時期に就職活動を始めると、採用の厳選化によって大量の学生が内定を得られなくなり、その後も全く採用されないため、フリーターの急増を招く。その後景気が回復してもその時の新卒を大量に採る為世代間による雇用機会の不均衡が生じる。


天下りの発生
年功序列の賃金モデルを維持するために、子会社の幹部ポストに社員を送り込む事が行われる。必然的に子会社の生え抜き社員の出世が見込みづらくなり、賃金の向上が望めない環境が生まれる。公官庁の場合は、庁内のポストに付けなかった人間を国からの補助金のある独立行政法人や公益法人に送り込む形で制度を維持しようとする。


スペシャリストの欠如
同一企業内で様々な部署を経験することになるため、従業員に専門性が身に付きにくい。結果として転職を阻害させることに繋がる。


世代による負担の格差
その性質上、年功序列は労働者人口が増え続けることを前提としているため、人口構成が変わり、若年層に対して年配層が多くなるほど若年層の負担が増加する。

-------------引用終了-------------------------------




なお、終身雇用を見直そうという議論はネット上でも行われています。その中の一つ、勝間和代氏の書いておられるサイトを紹介して今回の記事を終了します。


終身雇用を見直そう:勝間和代のクロストーク - 毎日jp(毎日新聞)

-------------引用開始-------------------------------

今回は、新卒一括採用・終身雇用を中心とした日本の労働市場に対する提案です。

 日本の労働市場はこれまで、新卒一括採用と終身雇用制を柱に成り立っていました。この方法は、忠誠心の高い社員を低コストで雇い、各社のニーズに合った人材を中長期の視点から育成するやり方として、たいへんうまく動いてきました。

 ところが、終身雇用の維持には、高成長と人口増が必要です。残念ながら、日本はその条件を満たせなくなっています。企業はこれまで雇った社員に優先して賃金を渡さなければいけないため、新規の正規社員雇用の機会が減り、若年層を中心に非正規雇用が急増する結果になりました。

 日本は終身雇用の仕組みを基本に社会システムを設計しているので、そこから漏れる人に対する十分なセーフティーネットが整備されておらず、派遣切りのようなしわ寄せが起きています。さらに、正規雇用者も削減対象になり始め、正規社員=安定雇用ではなくなってきました。リストラの対象にならなかったとしても、正規社員だから給料が上がる、出世する、という時代ではなくなってきています。




 今回の私の提案は、とてもシンプルです。「もはや、終身雇用は維持できない」ことを前提に、どうすればいいのかを一緒に考えたいのです。


 私のアイデアは、以下の3点セットです。


 (1)失業保険の給付強化(2)公的負担の職業訓練充実(3)ジョブカード制の普及・強化

 なぜこの三つかというと、終身雇用だと思っていた人が失職した場合、以下のことに困るためです。

 (1)翌日から、生活するお金がない(2)持っているスキルが他の場所でそのまま使えない(3)仮に使えるスキルを持っていても、違う業界だと、相手から正当に評価してもらえないことが多い

 従って、まずは失業保険のお金を受けとりやすくし、失職した場合に、すぐにお金が手に入るようにします。一部の非正規社員など、これまで保険対象から漏れてしまった人たちにも、給付しなくてはなりません。

 また、スキルについて、需給のミスマッチを生じることもしばしばです。この時に、公的な負担で新しいスキルを身につける場所がより豊富にあれば、人手の足りない業界に労働力を導くことができるでしょう。さらに、各人のスキルをアピールできるジョブカード制の普及・強化で再就職を支援します。

 すでにうまくいかなくなってきている終身雇用に固執し、非正規社員や若者を苦しめるのではなく、「どのような仕組みなら、私たちが安心して働けるのか」という視点からの提案です。みなさんのご意見をお待ちしています。


-------------引用終了-------------------------------



勝間氏のこの提案に対して、多くの議論が交わされていますが、ここで行われている議論はなかなか参考になりそうですね。

今回の記事はここまでで終わりですが、毎度のことながら、また今回も長文になってしまいました。いつもできるだけ短くまとめたいとは考えているのですが、非常に複雑な話であることに加え、各種文献からの引用も相当数になってしまうこともあって、どうしても長文になってしまいます。




テーマ:お金の勉強 - ジャンル:株式・投資・マネー

この記事に対するコメント
終身雇用の仕組み
>正社員の既得権益を壊す必要がある以上、正社員・労働組合などの激しい抵抗に遭うことになるでしょうが、これも大きな難関です。最終的に機会平等や同一労働・同一賃金を目指す

これが実現されれば、大量に投信を積み立ててるブロガーや住宅ローンをしているものが悲惨になりそうですね^^;;(いままでが恵まれ過ぎ??)
経営者としては笑いが止まらないような気もします・・

誰かが得をすれば誰かが損をする!
投資にも同じことがいえますね(笑)
【2009/08/18 22:29】 URL | 預金王 #- [ 編集]

管理人より記事の補足
 
管理人より記事の補足です。


山崎元氏がこんな内容の記事を書いておられるので紹介しておきます(いつもの通り、古い日付の記事ではありますが)。全文を引用すると長くなるので一部のみ引用しておきます。



雇用のルールをどうすればいいか - 評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」
http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/c1af464969666de9d9dc52bf41a20729

-------------引用開始-------------------------------

 2月17日付の「読売新聞」(朝刊)の「はたらく」という連載欄に「転職しやすい社会に」という見出しでインタビュー記事を載せて貰った。
 正社員の解雇の仕組みを整えるべきだということと、転職の際に不利や障害のない仕組みにした方がいいということの二点を意見として取り上げて貰ったが、雇用に関する制度設計では複数のルールをセットで考える必要があるし、紙面も限られていたので、現時点で、雇用のルールがどのようであれば望ましいと考えているのかについて、列挙してみる。ごく大雑把なもので、まだまだ変化の余地があるが、備忘のメモ代わりだ。

(1)正社員の指名解雇が出来る仕組みが必要

 会社にとって望ましい人的資源配分をなるべく低コストで且つ予想できるコストで達成できるようにするためには、正社員であっても、会社が任意に選んだ社員を解雇できることを手続きと補償を含めて明確にルール化することが必要だ。
 企業に利益の追求と(社員個人の)福祉の両方を求める中途半端な仕組みは、上手く行かない。企業は利益の追求に徹し(その中で社員への福祉提供が合理的な場合はあるだろう)、個人の救済は政府の仕事だと整理したい(原則として、政府は、企業単位、業界単位の補助や救済は行わない)。
 
(2)解雇の際の手続きと最低補償額を明確に定める

 会社は予想可能なコストで社員を解雇できる方が経営計画が立てやすいし、解雇される社員の側も解雇の予告期限や最低幾ら貰えるのか権利が明確である方が不利を受けにくい。手続きや補償額を明確化することで、労使双方が交渉コストを節約できる。
 現状では、社員はしばしば自己都合退社に「追い込まれて」不利な条件を甘受する事が起こっている。
 指名解雇の最低補償額を幾らにするのがいいかは難しい問題だが、期待年収の3ヶ月分から半年分位をイメージしている(額の多寡、条件の定め方には諸説あるだろう)。もちろん、これは、社内制度的にも、税制的にも退職金や年金とは別のものにすべきだ(妙な節税の余地を残すべきでない)。


-------------引用終了-------------------------------


山崎氏の書いておられる、「正社員の解雇の仕組みを整えるべきだということと、転職の際に不利や障害のない仕組みにした方がいい」という話には賛成です。

どのような形になるにせよ、正社員の解雇に関するルールを明確に決め、解雇規制を緩和する必要があるでしょう。「正社員は容易に解雇できない。だから非正規社員を先に解雇する」というルールは問題です。非正規社員を自由に解雇できるというのなら、正社員も同様に自由に解雇できるようにしないと不公正が生じるからです。

【2009/08/20 22:30】 URL | masa #.7tOqmoU [ 編集]


たぶん、解雇について明確なルールができればこれからは「金を払えばいいんだろ!」という経営者サイドにとっては本当に活動しやすい国になるでしょう。

資本家の夢は「賃金のいらない労働力」であり、勤労者の夢は「労働せずお金が得られること」であり、永遠に相容れないわけです。

終身雇用の最大の利点は社内に蓄積された技術や個人の能力が惜しみなく次世代の社員に引き継がれる点です。仮にルールに沿っていつでも解雇可能な状況が起これば
誰も習得した技術は他の社員に教えないでしょうし、会社にも技術を蓄積しようとする社員のインセンティブも働かないでしょう。経営者サイドも必要最低限すれすれ
のことしか教育しないでしょう。

現在決まっている残業代すら「ルール」に沿って支払わないこの国が果たして
解雇のルールなんてまもれるのでしょうか?
それともただ、不当な解雇を正当な解雇にするために、現状を追認するためだけのアリバイルールにするつもりなのでしょうか…。

はっきりしているのはどんなに厳しいルールを規定しても、守らない人は守らないということです。



【2009/08/21 09:35】 URL | リヒト #- [ 編集]

管理人より記事の補足「終身雇用制度が格差を固定させる」
 
管理人より、再び記事の補足です。

Wikipediaより引用します。



終身雇用(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%82%E8%BA%AB%E9%9B%87%E7%94%A8

※注・・・「『独自研究』に基づいた記述が含まれているおそれがあります」との注釈があります。

-------------引用開始-------------------------------

明治時代の末から大正時代の初めにかけて、大企業や官営工場が熟練工の足止め策として定期昇給制度や退職金制度を導入し、年功序列を重視する雇用制度を築いたことに起源を持つ。第二次世界大戦終戦後、人員整理反対の大争議を経験した日本の大企業は高度経済成長時代には可能な限り指名解雇を避けるようになり、また裁判所が「解雇権濫用の法理」によって実質的に使用者の解雇権を制限するようになり、終身雇用慣行が定着した。

しかし、1990年代から2000年代にかけて、多くの日本企業は円高や国際競争、平成不況の中で、人件費の圧迫と過剰雇用に直面し、雇用の調整が大きな経営課題となった。これに対して、いったん雇った期間の定めのない従業員を解雇する際には、上述のように、場合によっては解雇した従業員からの解雇権濫用による解雇無効訴訟のリスクを抱えてしまい、相当の覚悟がいる。

このため、過剰な雇用に直面した企業は、まずは新規採用の抑制を徹底させたといえる。こうした因果関係をもって、終身雇用の維持が、かえって若年の新規採用にしわ寄せを与え、若年層の非正規雇用を増やしたという指摘もある。

一方、「期間の定めのない」従業員の解雇が難しいとしても、事業所や事業部門を分社化して、再雇用するという手法を使えば、人件費を圧縮することは可能ともいえる。その場合、雇用は維持されるとしても、給与などの労働条件は大幅に下げられるのが普通である。そこで、終身雇用制度は見かけほど強固なものではなく、若年層の新規雇用にはそれほどの影響を与えていないという見方もある。


飼い殺し
経営状態の悪化や事業縮小(撤退)など理由により、企業側の都合で安易な解雇が横行するようになった結果、自社の重要な知識や技術あるいはノウハウを持った人物が他社に移ると、かえって事業展開に脅威となることが企業側にも理解されてきた。そのため、高度な技術的知識あるいは特殊なスキルを持つ人物を事業上の必要がなくなっても解雇せず、他部署に配置転換して雇用を継続することが行われる。また、労働組合関係者や地元有力者にコネがある者など、解雇すると紛争発生が懸念される人物も同様な措置が取られる。雇用が継続されるため、一見、労働者にとって有利なように思えるが、配置転換先では戦力として期待されず重要な仕事を任されないので、仕事のやりがいの点でストレスを抱え込むことになる。

さらに最近では、競合企業への技術流出防止や秘密保持のため、定年延長により高度な技術的知識あるいは特殊なスキルを持つ人物を囲い込むことや、重要部署に派遣されていた派遣社員を正社員として雇用することが多い。

飼い殺しの例
ゴードン・マレーはマクラーレンの車体設計者としてチームに数多くの勝利をもたらしたが、レースへのモチベーションを失い退職を願い出た。他チームへの技術流出を恐れたチームは、市販車製作子会社マクラーレン・カーズを設立し自由にやらせることを条件に雇用を継続、技術流出を防止した。

国民の民度を蝕む終身雇用
財団法人日本生産性本部発表の第20回 2009年度 新入社員意識調査によると、「良心に反する手段でも指示通りの仕事をするか?」の問いには、40.6%が「指示の通り行動する」と回答し、「指示に従わない」(11.7%)、「わからない」(47.7%)とする人がいるものの、調査開始以来の3年間で過去最高値を占める結果になった。このように日本で、「指示の通り行動する」の割合が高いのは、日本特有の事情で、会社を辞めるとやり直しが効きにくい社会だからだと思われる。もちろん上昇原因は不況などの要因があるかもしれない。しかしながら、不況の前からこの割合はかなり高い。欧米なら会社をやめても、やり直しがしにくい社会ではないので、このように高い割合にならないであろう。


非効率な労働市場
終身雇用を反対すると、既得権者達から死にもの狂いの抵抗を受ける。これは現在の就職市場が効率的ではないためである。現在の市場が効率的なら、終身雇用を廃止しても労働者は損も得もしない。


格差固定社会の主要要因
格差というものはやり直しの機会が多いほど固定しない。しかし日本では終身雇用に近い形態が維持されているため、やり直しの機会が少なく格差が固定されてしまう。格差固定の他の要因としては、やり直しの機会を奪う年齢差別などもある。


問題点
最近では大企業の正社員は終身雇用に近い形態(新卒一括採用~定年)、一方派遣労働者や中小企業の正社員は職を何度か変えるのが普通になりつつある。大企業では終身雇用に近い形態なため、雇用の流動性が乏しく、やり直しが困難である。雇用に流動性を与えるために、正社員を解雇しやすくする事が経済学者などにより提案されている。また中途者にとれば、終身雇用により一部の大企業で働く道は閉ざされてしまう事が多いので、機会均等の原則に反するという見方もある。勝間和代は著書の中で、終身雇用はいわば現代の小作農、奴隷制であり、労働環境の面で「NOといえない労働者」を生み出す要因になっていると述べている。



-------------引用終了-------------------------------

ここにあるように、終身雇用という制度は多くの構造的欠陥があります。高度経済成長期ならいざしらず、それが終わった今もこうした制度を継続させるというのはムリがあります。これこそが格差を固定させる大きな要因になっていると言えるからです。


それから、リヒトさんの書いておられるコメントに関してレスをつけておきます。

>たぶん、解雇について明確なルールができればこれからは
>「金を払えばいいんだろ!」という経営者サイドにとっては
>本当に活動しやすい国になるでしょう。

この点、全くその通りです。これをネガティブにとらえるのではなく、むしろそれを活用して経済を活性化すべきだと思います。それが資本主義というものです。労働者が何のために働いているのかといえばお金のためなのですからカネを払ってくれればそれでいいはずです。指名解雇に関しても、「解雇するならカネをくれ!」というルールでいいのでは?



>はっきりしているのはどんなに厳しいルールを規定しても、
>守らない人は守らないということです。

この点についてですが、どうやら私の記事の書き方が悪かったようです。
私が言っているのは、規制緩和ということですから、ルールを厳しくするのではなくて、逆にルールを緩くすべきだと言っているのです。つまり、ルールは守りやすくなります。

山崎氏も書いておられるように、会社にとっては解雇にかかるコストが明確な方がいいですし、解雇される従業員側にしても、解雇の期限やいくらもらえるのかということがはっきり分かる方がいいはずです。ルールが存在しないというのは根本的におかしいと思います。

また、終身雇用制度では、Wikipediaにもあるように、一旦雇ってしまうと簡単には解雇できないので、新規採用には極端に慎重にならざるを得ません。仮に雇った人がとんでもない無能であっても解雇することができないからです。
一方、労働者にとっても、いざ転職しようと思っても簡単には採用してもらえません。このことが多くの問題を引き起こしているといえると思います。


>残業代すら「ルール」に沿って支払わない


この点についてですが、「そもそもルールが厳しすぎて守れない」のが実情ではないかと思います。
実際問題として、特に中小企業では、まともに残業代を払っていたら会社が潰れてしまうという会社は少なくないはずです。
(余談ですが、私が最初に勤めていた会社は、残業代を含めれば給料レベルは非常に良かったのですが、それが会社が潰れることになった要因の一つであったのだろうと今でも思っています。私の場合、「貯金はできた。しかし会社は潰れてしまった」という笑えないオチですね・・・)


長くなるのでここで終わりますが、いずれにしても規制緩和によって経済を活性化すべきだと思います。
今になって派遣を禁止しろだの、最低賃金の大幅引き上げだのというような規制強化はまさに愚の骨頂です。

【2009/08/21 23:08】 URL | masa #.7tOqmoU [ 編集]


中小企業の正社員経験を持つ派遣社員です。

現在就業中の企業に多数いる無能なおじさま、無能ではないけどやる気のないおじさま、勤務中にも係わらず転職のための資格の勉強に勤しむ若手社員…みんな大企業病ですね。
こんな社員でも解雇出来ない企業が気の毒にすらなってきます。

40~50代の社員を解雇すれば、代わりに優秀な派遣・契約を3人、20代の社員でも1.5人は雇うことが出来ます。

セーフティーネット(例えばBI)を整備した上での正社員の特権撤廃には大賛成です。
某政党が主張する最低賃金1000円なんて…私が働く地方都市の最低賃金は670円前後、派遣の時給は1100円が最低ラインです。
最低賃金が1000円になったら派遣の時給も同じように跳ね上がるのでしょうか?そうはならないでしょう。

例えそうなるとしても、少なくとも能力のある派遣・契約はそんなことを望んでいないように思います(時給UPはありがたいですけども…)。

派遣や契約に仕事を丸投げして、勤務中に自分の勉強をするような“有害社員”と同じ土俵で勝負したい、同じ条件で評価されたいと考える人は少なくないのではないと思います。

先日契約終了になった友人は「本当に辞めて欲しいのはあなたじゃないんだが…」と言われたそうです。
わたしもそう思います。
【2009/08/22 09:37】 URL | ゆん #mQop/nM. [ 編集]


今や労働人口の3割から4割が非正規労働者らしいです。
正社員として守られている、多分40代以上が多いと思われますが、
あまりに、守られすぎのように思えます。
もっと若い人達に夢や希望が持てる社会にする必要があります。
労働組合などは非正規社員など全く無視していると思います。
一体、就職氷河期の人達や、若くても正社員になれなかった人達は
どれほどの苦労をしなければならないのでしょうか。
自動車が売れない。自動車会社は非正規労働を容認どころか積極的に
推進してきました。当たり前の話です。車に魅力がないのではないです。
車を持てる環境がすでに崩壊しているのです。
もはや、グローバル企業は日本には期待していないのでは
ないかと思います。日本が沈もうがどうなろうが、企業として生き残れる算段を
始めたのではないかとさえ思います。
将来、この国はどうなってしまうのか非常に不安です。
【2009/08/22 13:04】 URL | ローゼンクロイツ #mQop/nM. [ 編集]

管理人より記事の補足「問題の本質は、正社員至上主義と、労働者VS労働者の既得権益をめぐる争い」
 
管理人より記事の補足と臨時コメントです。

>>預金王さん

>これが実現されれば、大量に投信を積み立ててるブロガーや
>住宅ローンをしているものが悲惨になりそうですね^^;;
>(いままでが恵まれ過ぎ??)

確かに大変な目に遭う人も出てくるでしょう。
しかし既得権益によって得た利益は、そもそも当人の実力によるものではないのですから、賃金の適正化は必要だと思います。


>経営者としては笑いが止まらないような気もします・・

グローバル化の流れや厳しい競争という現実に逆らうことはできないわけで、経営者だからといってそんなに楽ではないはずです。一歩間違えれば競争に負けて会社が潰れるという危機感を持っている人は少なくないでしょう。というよりも、本当に経営者が楽だと思うのなら、自分が経営者になればいいわけですが、それが大変だからこそ従業員という雇われの道を選ぶ人が多いのだと思います。



>>ゆんさん


コメント、ありがとうございます。

>こんな社員でも解雇出来ない企業が気の毒にすらなってきます。

同じく(^^;)
この手の人は意外と多いですね。私の知っているケースでも、仕事をしている時間よりもタバコ休憩の時間の方が明らかに長い人とか、本当はヒマなのに、忙しいふりをして人に仕事を押しつけ、当人はほとんど仕事をしない(というよりも、時代の変化についていけず全く仕事ができない)とかいう問題正社員はけっこういるものです。こんな人を解雇できないのは、あまりにも理不尽です。


>先日契約終了になった友人は「本当に辞めて欲しいのはあなたじゃないんだが…」
>と言われたそうです。

この手の話はゴロゴロ転がってますね。
私が個人的に知っているケースでも同じようなパターンでした。正社員の解雇規制が厳しいがゆえに、無能正社員よりも優秀な非正社員の方が切られてしまう。これこそが最大の問題点です。非正社員を解雇するのは合法だが、正社員を解雇するのは解雇権の濫用になるというダブルスタンダード。こうした労働の二重構造にメスを入れるべきです。


>セーフティーネット(例えばBI)を整備した上での
>正社員の特権撤廃には大賛成です。

BIというのはベーシックインカムのことですね?
ベーシックインカムの話については今回は触れませんが、例えば欧米で実施されている給付金付き税額控除のような制度は必要でしょう。企業に負担を強いる最低賃金引き上げではなく、政府による給付金付き税額控除によって対応すべきだと思うわけです。また、非正規雇用労働者を対象とするセーフティネットが必要なのは明らかですね。既得権益によって特権階級と化した正社員という高度経済成長期の遺物が維持できなくなったことによってこんな問題が起きているのですから、時代の変化に対応したシステムを構築し直す必要があります。




>> ローゼンクロイツさん


>労働組合などは非正規社員など全く無視していると思います。
>一体、就職氷河期の人達や、若くても正社員になれなかった人達は
>どれほどの苦労をしなければならないのでしょうか。

この点、まったくその通りです。自己責任論者に言わせれば、”努力が足りない”そうですが、就職氷河期以降の世代にとってみれば、一体どれほど努力させれば気が済むのだと言いたいところでしょう。労働組合に関しては、一部の労組を除き、非正社員を完全に無視していますね。非正社員も救おうとしたら自分たちの取り分が減ってしまうのを恐れているからそうなるのでしょう。

いささか暴論になりますが、正社員の既得権益を守るために若者を犠牲にし、事実上見殺しにしてきたといっても過言ではないと思っています。

余談ですが、いわゆる公務員叩きをしている人であっても、正社員の既得権益批判をする人は少ないように思います。これもまた奇妙な話だなあと思っています。自らの既得権益批判をするのはさすがに都合が悪いということでしょうか。


>もはや、グローバル企業は日本には期待していないのでは
>ないかと思います。日本が沈もうがどうなろうが、企業として生き残れる算段を
>始めたのではないかとさえ思います。

この点、私も同じことを考えています。今はまだ工場の海外移転とかいう程度ですが、そのうち本社そのものを海外に移転する企業が続々と出てきても不思議はないと考えているのです。少子高齢化で市場の縮小が予想されている日本という国にグローバル企業が将来性を見出すのは困難だと思います。もちろん、日本という国がある限り、販売拠点などはある程度日本国内に残すとしても、主軸はより大きな成長を遂げるであろう国に移す方が合理的でしょう。今後、グローバル化がさらに進めば、日本という国に明るい将来性を見出せないこれからの若者たちも、日本という国を見捨てて、どんどん海外に出ていってしまうかもしれません。ちょうど、地方から都会へと若者たちが出ていくように・・・。
日本という国が先進国という地位から転落するのではないかということを懸念します。そのうち、「むかしむかし、日本という大変豊かな国があってなあ・・・」というように、日本という国が昔話で語られる日が来るかもしれません。



ここから先は記事の補足です。

正社員と非正社員の差別を生み出した要因の一つは、「正社員にあらずんば人にあらず」とでもいうような考え方が蔓延しているからではないかという気がしています。たとえ非正規雇用であっても立派な仕事であるにも関わらず、それを露骨に見下し、「そんなものは働いているとはいえない。実務経験・キャリアとは認めない」という差別的で傲慢な考え方が蔓延しているように思えるのです。こうした発想の元になっているのは、私がよく好んで使う表現を使うなら”正社員至上主義”というところでしょうか。「正社員でなければ労働者ではない」というような、おかしな考え方です。高度経済成長期の正社員を中心とした雇用制度の記憶がそういう発想をもたらしているのでしょうけど、こうした歪んだ考え方が労働市場の歪みをもたらしているとも考えられそうです。

市場に歪みがあればそれを利用して利益を得る人も出てきます。正社員と非正社員という労働市場の二重構造のおかげで正社員は立場が守れているようなものだと思います。何しろ、どんなに無能であっても、いったん正社員という地位を手に入れたら、よほどのことがない限りそう簡単には解雇できません。人を辞めさせなくてはならないとなったら、非正社員という”大変便利な雇用調整弁”がありますし、雇用調整弁が全員いなくなってしまい、無理やり辞めさせられそうになったら、解雇権の濫用だと騒ぎ立てればいいのです。これで正社員の地位は安泰だというわけです。「非正社員がクビになるのは当人の無能によるもので、正社員がクビになるのは解雇権の濫用」という、実に都合のいい話です。


現実問題として、実際には既得権益のおかげで利益を得ているにも関わらず、そのことを自覚せず、自分の実力で得たものだと勘違いしている人はけっこういるはずです。正社員の解雇規制が緩和されたらそれを思い知らさせる人も多いことでしょう。・・・というか、それがわかっているから解雇規制の緩和に反対するのでしょうけど。



さて、解雇規制緩和が必要だとしても、これと同時に議論しなくてはならないのは、どんな風にセーフティネットや再就職支援制度を構築するかということです。これがなければ不況の度に大量の失業者が街にあふれることになるからです。解雇規制の緩和とセーフティネットの再構築・再就職支援システムというのは鶏が先か卵が先かというコロンブスの卵のようなもので、この両者は同時に進めなくては大変なことになりますね。


それから最後にもう一つ。こうした問題を語るとき、よく資本家VS労働者という図式が語られますが、今の日本ではこれも当てはまりにくいのではないかと思っています。なぜならば、経営者や上級管理職といえどもその多くはサラリーマンという雇われの存在に過ぎないケースが多いからです(もちろん、オーナー企業は除いての話ですが)。よって、この問題の本質は労働者同士の既得権益を巡る争いだと考えているのです。


書くべきことはまだまだありますが、書き始めるときりがないので、このくらいでとどめておきます。
 
【2009/08/23 15:05】 URL | masa #.7tOqmoU [ 編集]


> 解雇規制緩和

賛成。
実力で評価されるべきでしょう。
【2009/08/24 21:31】 URL | ひろん #- [ 編集]

管理人より臨時コメント「いよいよ問題の本質へと辿りついた」
  
>>ひろんさん

>賛成。
>実力で評価されるべきでしょう。

今の状況や経済の理屈を考えれば、正社員の既得権益の縮小・撤廃、解雇規制緩和という方向に進むべきなのは当たり前のはずなのですが、政治的にはこのことがタブーになっているのが気になります。「既得権益があまりにも大きすぎて潰せない」ということなのでしょうけど、国民の多くが「なぜ正社員の過剰保護が問題なのか」という根本原理が理解できないということも大きいのでしょう。

それ以上に心配なのが、市場原理そのものを否定したり規制緩和に反対するような動きがあることです。雇用問題に関しても、規制緩和どころか、どうやら全く逆方向(規制強化)に動いているようで、こんなことでは日本の未来はいよいよ暗くなりそうですね・・・。どうやら政治家も経済オンチばかりのようです。


さて、これまでこの非正規雇用問題に関して膨大な量の文献を読み(一体どれだけの本を読んできたかわからないくらいです)、いろいろなことをひたすら考えてきて、ようやくにして問題の本質的部分にまで辿り着いた感があります。もっとも、書くべきことはまだまだありますが・・・。

【2009/08/24 22:46】 URL | masa #.7tOqmoU [ 編集]

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【2009/08/25 11:17】 | # [ 編集]


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